COLUMN

コラム

プログラミングは表現のための道具なのだ
アスキーが小中学生プログラミング大会をはじめた理由
【遠藤諭の子どもプログラミング道】
遠藤 諭

2020/06/10

遠藤 諭

月刊アスキー元編集長で現在は角川アスキー総合研究所の首席研究員でもある遠藤諭氏が、なぜ今子どもにプログラミングが重要なのか、長年コンピューター雑誌にかかわってきた立場から解説します。

子ども向けのプログラミングの学校ってなんだろう

今から5年ほど前、私のいるKADOKAWAグループの角川歴彦会長から「エンドウくん、子ども向けのプログラミングの学校を考えてみないか?」と言われたことがありました。

プログラミングの学校と言われてもどんなふうにはじめたらいいのか? そんな折に、UEIの清水亮社長(現ギリア社長)とCANVASの石戸奈々子理事長と話をしていて「子どものプログラミングの世界にも《作文》や《絵》や《音楽》みたいな全国規模のコンテストがあるといいよね」という話になりました。

私は、『月刊アスキー』というパソコン雑誌の編集をやっていましたが「雑誌は《学校》だ」ということをいつも感じていました。新しいテーマなど「まだ教科書にのっていないことを学べるのが《雑誌》」というわけです。今そのことを学ぶととても役に立つようなことでも、本や教科書としてまとまるのには何年もかかるからですね(実は出版の歴史をひもとくと、「雑誌」とはまさにそのようにして17〜18世紀にフランスや英国で生まれたものなのですが)。

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つまり、学校の形をしていなくても「学校」のような役割をはたすことができる。そして、子ども向けのプログラミング作品コンテストには、ちょうど「作文」や「音楽」や「絵」のコンテストが学校の授業を補完しているように、やってみる意味がありそうだと思えたのでした(プログラミングの学校はまだできていないのですが)。

大事なのは子ども時代に「褒められた」記憶

コンテストの何がよいのか? 誰でも、子ども時代に「褒められた」ことがあると思います。ふだんの授業ではあまりその記憶がなくても、なにか特別な宿題や課外授業で、心当たりがある人もいるでしょう。ここで恥ずかしげもなく私の個人的なことを書かせてもらうと、小学校3年か4年生のときに理科の「日の出・日の入りの記録」という宿題がありました。

1年間かけて毎月1回、日の出と日の入りのようすを絵で記録していくという割りとハードな宿題です。朝5時に起きて眠い目をこすりながら、あるいは家族が夕食前にテレビを楽しんでいるときに、自宅の2階の窓から画用紙の上に街のシルエットを目印に丸く太陽を描いて記録していきます。

やがて半年ほど経過したときに、宿題の「中間報告」として描かれた図を持ってくるようにという指示がありました。すると、40名ほどいた私のクラスで、毎月欠かさず日の出・日の入りを記録していたのは私一人だけなのでした。ほぼすべての生徒が、最初の2、3回くらいやって、そこで挫折。日の出の位置が夏至をさかいに折り返すはずが、どんどん北側に移動していく生徒もいました。このとき先生に褒められたし、女子たちも私に一目置くようになった気がしました。

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私は、小学生ながら自分の「人生のやり方(戦略)」が決まったと感じた瞬間だったのだと思います。自分の得意分野がわかって、戦略がはっきりしていると《努力》がラクにできるようになる。私の場合は、たまたま「日の出・日の入りの記録」でしたが、これは、子ども向けのプログラミングというものの性質を考えると、少し似たようなことがあると思っています。教室の机について、先生の話を聞くのとは違うフィールドでの、自分の才能やキャラを自分で発見できるということです。

プログラミングは「表現する力を身につけるために学ぶもの」

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さて、前置きが少々長くなってしまいましたが、こんな理由もあって2016年に清水社長、石戸さんと「全国小中学生プログラミング大会」をはじめました。主催の実行委員会は、アスキー総合研究所とNPO法人CANVASで構成、共催が朝日新聞社。実行委員長には、稲見昌彦さん(東京大学先端科学技術研究センター教授 )、審査委員長には河口洋一郎さん(CGアーティスト、東京大学名誉教授)。審査委員には、金本茂さん(株式会社スイッチサイエンス代表取締役)、林千晶さん(株式会社ロフトワーク代表取締役)、増井雄一郎さん(Product Founder & Engineer)、 松林弘治さん(エンジニア/著述家)につとめてもらいました。

この実行委員長と審査委員会の顔ぶれが意味するところは、プログラミングを「表現する力を身につけるために学ぶもの」と位置づけていることです。本年度から小学校におけるプログラミング教育の必修化が開始され、プログラミング教育への関心が高まっています。その背景としてはこれからの世の中を生きていくための手段として必須になるからというのがあるでしょう。それに本当に答えるには、プログラミングは「表現」(考えたものを形にしてみんなに受け入れてもらうこと)だという考えが必要だというものです。

そんなわけで、全国小中学生プログラミング大会は、応募された作品をプログラミングのスキルだけでなく幅広い視点で評価します。算数や論理的なことが得意な子ども、美術やデザインや音楽に興味のある子ども、モノを分解したり作ったりすることが好きな子ども、あるいは何か大好きなものがあるという子ども。どのタイプの子どもにも門戸を開いているものとしたいと考えています。

今年度の「第5回全国小中学生プログラミング大会」は、新型コロナウイルスの影響で例年夏休み明けの9月初旬だった作品応募の締め切りを11月3日(火)に設定。新しい試みとして各地で行われる地方自治体や教育委員会などが主催するプログラミングコンテストとの連携をはかります。それら主催者に「エリアパートナー」となってもらい、告知・広報などからコンテスト自体の連携についても具体的に相談させてもらっています。全国小中学生プログラミング大会の開催内容、およびエリアパートナーについては、公式サイト(http://jjpc.jp/)をご覧ください。

プログラミングは表現のための道具なのだアスキーが小中学生プログラミング大会をはじめた理由【遠藤諭の子どもプログラミング道】
遠藤 諭

2020/06/10

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