COLUMN

コラム

当時の自分を魅了したApple IIの「ロボットオデッセイ」
そこにはプログラミング的思考の原点があった
【遠藤諭の子どもプログラミング道】
遠藤 諭

2020/07/10

遠藤 諭

元月刊アスキー編集長の遠藤諭さんがはじめて買ったパソコンは「Apple IIc」。そこから現在のプログラミング教育に思いを馳せます。そのきっかけは「ロボットオデッセイ」。

子どものプログラミング入門に最高だと思う“35年前のゲーム”が復刻されていた

私がはじめて買ったパソコンは、「Apple IIc」という1984年にアップル(当時はアップルコンピューター)が発売した8ビットコンピューターでした。当時、私はプログラマーとして仕事をしていたのですが、アスキーに入社して『月刊アスキー』に配属されたのと前後して、この米国製コンピューターを買ったのでした。

国産パソコンではなくApple IIcを買った理由は、その上で走らせることのできるソフトウェアの世界に魅力を感じたからでした。ごく最近、そのときの気持ちをリアルに蘇らせてくれる体験をしたので、それについて今回は書かせてもらいます。少し前に、本を整理していたら「Apple IIc」を買ったらついてきた『はじめてのあっぷる』という冊子が出てきたのがきっかけでした。

“子ども”のユーザーを想定した『はじめてのあっぷる』

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『はじめてのあっぷる』は、平仮名でタイトルがあるとおり、“子ども”のユーザーを想定した内容の本です。「Apple II」は、1976年に発売されて大ヒットしたシリーズで、米国では小学校に浸透しており、“子どものためのコンピューター”のお手本みたいな感じがあったと思います。同じく1984年には、アップルが「Macintosh」(Macの先祖)を発売したので、大人はMacintosh、子どもはApple IIみたいな営業方針があったのかもしれません。

ところが、私には爛熟期のApple IIのソフトウェアの世界の奥深さのほうに魅力を感じたのでした。なにしろ、ソフトウェアの数が多いので泡沫的なソフトからその後の1ジャンルを生み出すきっかけとなった画期的なソフトまであります。とくに8ビットの時代には1人の天才が生み出したありえないテクニックやアイデアによる神がかり的なソフトウェアがあったのも気になっていました。

そういえば、その頃に角川書店からApple IIの分厚いカタログ本が出ていました(『アップルソフトウェア総覧——最新版』1985年刊:あるとき担当されたらしいSさんにうかがったら売れなかったとか)。実のところApple IIのソフトの世界は我々がよく知っているゲームやワープロなどの世界とは一線を画する創造性がありました。そのうちのいくつかは、どちらかというと《文学》や《音楽》やひょっとしたら《遊具の設計》みたいなものを感じさせます。

前回のコラムで紹介した「全国小中学生プログラミング大会」の《プログラミングは「表現」である》というコンセプトはこれのことなのだと思います。『はじめてのあっぷる』のソフト紹介ページには、次のようなソフトが紹介されていました(一部ですが)。

・ロードランナー
・ウルティマ II
・フライトシミュレーター
・ピンボール・コンストラクションセット
・ソング・ライター
・ロッキーくんの長ぐつ
・アップル・ワークス
・アップル・ロゴ

なんだか《むかしのソフトはよかった》といった調子の原稿になってきたように思われるかもしれません。《自分が親しんだソフトウェアを懐かしがっているだけ》とも指摘されそうです。そう思われてもよいのですが、次回以降のこのコラムで1つ1つ紹介していくのもよいと思っているくらい見るべきものがあります(いまのところその予定はありませんが)。

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アップルがMacを発売する前に発売していたApple IIシリーズは、ちょうどいまのiPhoneやAndroidのような《ソフトプレイヤー》として、実にさまざまなソフトウェアが発売されていた。写真は『ドラゴンクエスト』などに大きな影響を与えた『Ultima II』の紹介ページ

「ロッキーくんの長ぐつ」と「ロボットオデッセイ」

さて、ここで紹介されたソフトウェアの中の1つ「ロッキーくんの長ぐつ」(Rocky's Boots)という教育用ゲームがあります。私は、「ロッキーくんの長ぐつ」はやっていないのですが、「ロボットオデッセイ」(Robot Odyssey)という同じ会社の作った、ほぼ同じゲームエンジンを使ったゲームをやったことがあるからです。

「ロボットオデッセイ」は、私がApple II向けのソフトウェアでも、もっともすばらしいと感じたゲームの1つなのでした。そして、いまもこのゲームには《プログラミングをはじめる前の子どもにピッタリの内容が含まれている》と思っています。日本では《「プログラミング的思考」という言葉がありますがその正体はコレのことでは?》と言ってみたくもなるのでした。

それでは、このロボットオデッセイとはどんなゲームなのか?『はじめてのあっぷる』をきっかけに調べてみると、なんと「ロボットオデッセイ」が、10年ほど前にウェブブラウザ版として復刻されているのでした! これを書いている時点で、ゲームが法人著作として切れているか確認できていないので、いま広くはオススメはしないのですが、参考として以下にリンクを貼ります。

プレイヤーは、宇宙船のようなロボットを操作してミッションをこなすパズルアドベンチャーです。チュートリアルも充実しており「ROBOT ANATOMY」など基本的なメニューを見るだけでも、ロボットの操作はプログラミング的な発想によって行われるようになっていることがわかります(この部分だけ紹介したYouTube動画がありました)。

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「ロボットオデッセイ」はプログラミング的思考を鍛える

このゲームが、なぜプログラミングをはじめる前の子どもにピッタリかというと《目的(いちばん簡単な例では次の部屋に移動したい)のために自分でイメージを膨らませる》ことになります。次に、その《膨らんだイメージを論理的に整理してみる(たとえば動く向きを変えないと進めない)》ということをやります。あとはそれを《配線に置き換える》だけだといってもよいと思います。

理想のプログラミングとは、このようなものだと元プログラマーのはしくれの私は思っています。あてずっぽうに配線して失敗するのも経験としてはよいのですが、やがてそうではないやり方にワクワク感をおぼえるようになる。

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Robot Odysseyのプレイ画面。配線をつないでロボットを動かす。自分が直接ロボットを手づかみするのではなく、やりたいことを整理して配線としてプログラムする感覚がすばらしい。非常にプリミティブなプログラミング心の琴線ともいえる部分に触れる内容。プヤイヤーの分身(右上の画面の右側にいる)をロボットの上に持ってくるとロボットの内部の画面になる(右下の画面)。三日月形はバンパーのセンサー、三角形はロケット噴射。この配線では左右の壁の間をロボットが行ったり来たりする。

ただし、1点、このゲームは子どもがすべてを解いていくにはハードルが高いかもしれません。単なる信号線の接続からはじまりますが、論理ゲートによるデジタル回路、そのチップ化、ロボット間の通信へと進みます。逆にいうとこれを解いた子どもはすごいということになるのですが。《プログラミングをはじめる前の子どもにピッタリの内容が含まれている》と奇妙な言い方になってしまったのはこのためです。

このゲームのゲームエンジンを作ったワーレン・ロビネットという人物は、8ビット時代の神がかり的なプログラマーのひとりです(その後のゲーム以外での業績もすばらしいのですが)。先日、日本テレビの金曜ロードショウでスピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』(2018年)が放送されましたが、ストーリーのカギを握る《イースターエッグ》は、彼のゲームがもとになっているそうです。

プログラミングもさることながら《すばらしい作品に触れよう》ということでもありますね。

当時の自分を魅了したApple IIの「ロボットオデッセイ」そこにはプログラミング的思考の原点があった【遠藤諭の子どもプログラミング道】
遠藤 諭

2020/07/10

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