COLUMN

コラム

「誰かの役に立つ」ことが大切なのか
子どもがプログラミングに夢中になる理由
【プログラミング教育のホントのところ】
宮島 衣瑛

2020/07/30

宮島 衣瑛

子どもたちがプログラミングを学ぶとき、何を目的に学ぶのが一番よいのでしょうか。2つの事例を通して、子どもの学びについて考えてみみます。

プログラミングを学ぶ目的

子どもたちがプログラミングを学ぶとき、誰かの役に立つために作品をつくろうと声をかけられる場面がたまに見受けられます。これは、文部科学省が出している『プログラミング教育の手引』でも「コンピューターの働きを、よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度を涵養する」という部分で言及されており、プログラミングを学ぶ目的のひとつとされています。

私たち人類は、生活を豊かにしたり便利にするためにテクノロジーを発達させてきました。たとえば最近では、新型コロナウイルスの感染経路を明らかにするために、接触確認アプリが開発されました。これはテクノロジーがよりよい社会づくりにつながる非常によい例でしょう。

ここで問題となるのは、子どものうちからプログラミングを学ぶことと「よりよい人生や社会づくりに生かそうとする態度の涵養」が、どこまで一緒に追求できるかということです。今回は2つの事例を通して、子どもの学びと「誰かの役に立つ」ことの接点を考えてみたいと思います。

子どもがプログラミングした2つの事例

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1つ目の事例は、当時小学5年生だった女の子がつくったプロジェクトです。彼女はお母さんからよく何を食べたいか聞かれていましたが、途中で答えるのに面倒になり、どうにか簡単にできないかを考えていました。そこで彼女は、料理の種類(中華料理やごはんもの、など)を選択するとレシピを提案してくれるプロジェクトをScratchでつくりました。

プログラム的にはそこまで難しく複雑なものをつくっているわけではありませんが、彼女はこの問題をどうにかして解決したいという強いパッションがありました。料理の種類を考えるために友達に聞いたり、その結果種類が増えてしまったため、画面を分割するなどインターフェイス上の工夫もしています。

作品発表会のときにはまだ完成していなかったものの、自分がやりたいことをしっかりと発表しました。

※お母さんからは、冷蔵庫の中にあるものからメニューを提案してくれるアプリをつくってほしいと追加の要望が出ていました。彼女は2年以内にはつくると答え、会場からはエールが贈られました。

この事例から考えられることは、たしかに自分自身の生活上の課題を解決するためにプログラミングを用いることは、子どもたちでも思いつき、実際につくれるということです。彼女の場合は自分自身の課題から家族の課題へと視座が一段階上がりました。これは立派な社会とのつながりのひとつと言えるでしょう。

重要な点は、これが彼女自身の中から出てきた課題意識からつくったということです。私たちメンターから促したわけではなく、自然にこのようなことを思いつき、そしてつくりました。

最近では課題解決をテーマとするハッカソンやアイデアソンがよく行われていますが、まずは課題を把握することが1つ目のハードルになります。第三者視点に立って把握することはある種の非認知能力の涵養につながるでしょう。でも、まずは自分の身近なところからはじめてみるのがいいのかもしれません。

2つ目の事例は、小学2年生の男の子がつくっている、歴史ゲームのプロジェクトです。彼は自分が興味をもっている日本の歴史上における戦いの様子を想像して、Scratchでアニメーション作品をつくりました。彼の作品は、見るたびに新しい作品が追加されており、どんどん進化しています。細かなところのつくり込みが秀逸で、毎回驚かされています。

彼の場合、社会をよりよくするなどといった動機から作品をつくっているのではなく、自分の興味関心の世界を広げるために、情熱をもって作品をつくっています。誰かのためにならない作品をつくってはいけない、ということはまったくありません。彼自身は自分の作品をさらによくするために歴史を学び、表現しています。

「誰かのため」は大人の視点

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これら2つの事例から考えられることは、作品をつくる目的が「誰かのため」であるかないかという点は、大人たちが勝手に決めてしまっているラベルなのではないかということです。子どもたちにとっては、それが「やりたいからやる」「楽しいからやる」だけであり、そこにそれ以上の意味や目的をわざわざつける必要があるでしょうか。

本来的にはプログラミングを学び熱中して作品をつくっているという点において、差はないはずです。ですが、私たちはしばしば人の役に立つものをよしとしてしまうことがあります。子どもの学びを考えたとき、それは大した目標ではないのかもしれません。

 

子どもたちの中には、学んでいるといった意識もあまりないように感じます。たしかに外側にいる私たちから見れば、彼らは新しい技術や知識を獲得しています。それこそ学んでいると言えるでしょう。しかし、子どもたち自身は学んでいるというより、楽しんでいる・遊んでいることと同じ感覚をもって取り組んでいるように見えるのです。

私たちは生きているだけで多くのことを学んでいます。それがたまたま教科書に載っているような体系立てられた知識であるかどうかにかかわらず、たくさんのことを学び得ているのです。プログラミング(さらに言えばものづくり)を通して学べることはたくさんあります。

学びの目的は人によってそれぞれですが、子どもたちの学びの中には大した目的などないのかもしれません。でも、それでいいのです。人の役に立とうが立つまいが、プログラミングをしたいからやる。そういったことを大切にできる環境で、子どもたちの学びや創造性は発揮されるのだと思います。

「誰かの役に立つ」ことが大切なのか子どもがプログラミングに夢中になる理由【プログラミング教育のホントのところ】
宮島 衣瑛

2020/07/30

宮島 衣瑛

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